Papers in Meteorology and Geophysics, Vol. 45, No. 2, pp 51-63, 1994
チェルノブイリ原子力発電所事故による放射性汚染物質の長距難拡散の数値シミュレーション
里村雄彦・木村富士男*・佐々木秀孝・吉川友章・村治能孝**
(気象研究所)*現所属:筑波大学地球科学系 **(株)国際気象海洋 現所属:(株)エナジシェアリング
要旨
チェルノブイリ原子力発電所事故の際に放出された放射性汚染物質の、ヨーロッパにおける空気中濃度と沈着量について、気象研究所の長距離輸送モデルを用いて計算した。このモデルは、気象庁の旧ルーチンモデルで気象要素の予報を行い、ラグランジュ移流拡散モデルで汚染物質の濃度を計算する。発電所からの汚染物質の放出量として、ATMESプロジェクトで配布された発生源データを用いた。計算の結果、モデルのCs-137とI-131の空気中濃度は観測とよく合うことが示された。しかし、沈着量は観測と合わないこともわかった。気象予測モデルの降水予報の精度の悪さと、観測値とモデルとがそれぞれ代表するスケールの違いが、沈着量の差の原因と考えられる。