計算の結果、モデルは風下波の波長、振幅、出現位置をうまく再現することがわかった。モデル地形が風下波の波長成分(約10H)をほとんど含んでいないことから、計算結果と観測の一致は、観測された風下波が長い波長の山岳波の非線形相互作用によって励起されたことを強く示唆している。また、感度試験を行った結果、風下波の位相は平均風のわずかな変化に敏感なこと、短波長の地形の存在によって風下波の振幅が大きくなることも示された。
運動量の鉛直フラックスについても観測との比較を行った結果、観測の下限である高度4km付近においては、モデルと観測ともIOP-3でほぼ-15×10**4 N/m, IOP-9第3日でほぼ十10×10**4 N/mと、両者の対応は良かった。しかし、高度4km以上で運動量フラックスの絶対値の急速な減少が観測されたのに対し、モデルではほぼ一定となっていることが分かった。このような、モデルの中上部対流圏での運動量フラックスの過大評価は、運動量フラックスの大半を担っている長い波長の山岳波の振幅をモデルが過大に表現したためである。その原因として、現実大気における平均風の時間変化や横方向の運動量フラックス発散が考えられることを示した。