Journal of the Meteorological Society of Japan: Vol. 59, No. 1, pp. 148-167, 1981.


浅水のシアー不安定に関する研究

里村雄彦

東京大学理学部地球物理学教室

要旨

 シヤーのある平行流の線型安定性を浅水方程式を用いて調べた。この方程式系における不安定の必要条件とHowardの半円定理を導き、エネルギー交換について論じたのち、次の2種の平行流の安定性を吟味した。即ち、両側に壁がある平行Coutte流と片側に無限大まで続く静止流体が接続しているCoutte流である。方程式の確定特異点付近の巾級数の形に解を表現することによって、固有関数と固有値を精度良く求めた。

 両側に壁がある場合、フルード数が2以上で重力波が不安定になった。フルード数を固定したとき、波数に関して離散的に不安定となる。片側に静止流体が続く場合にはフルード数が1以上で2種の不安定重力波があった。ひとつは壁付近に束縛された波で前の場合の不安定波の変形と解釈される。もうひとつはエネルギーを無限遠へ放射する波で、前の場合には中立波であったモードである。

 これらの不安定波は深さを重みとして平均した運動エネルギーからエネルギーを引き出すことを示した。不安定波による運動量再配分の可能性についても議論した。