湿潤対流と環境場に関する研究会
2003年3月24日
名古屋大学
地球水循環研究センター
3F大会議室
09:30 上田
- 雲とは何か:GAMEの枠を越えた命題
- 可視化された水や氷の微粒子の集合という見方 ⇔ 雲の力学(環境場を含む)からの見方
- モンスーンアジア・熱帯会場:下層湿潤・低い凝結高度・下層で雨の形成(これは思い込みではないか??)
- 地域特性・日変化・分布:これらについて整理して行く
09:40 篠田 趣旨説明
09:50 篠田 GAME-HUBEX&梅雨前線帯の南側
- Huiehe river周辺は水田。少し北では水田無し。
- 7/13-14に深い対流雲が発達
- 7/10-15:レーダーエコー面積:午後に発生し,深夜に終了
- 数値実験では中層が湿潤
- CAPE〜1000~4000,鉛直シア無し,CIN~100~0
- 中層の水蒸気量が可降水量変動を規定していた
- 比較的浅い対流も中層を湿らせているかも。主には大規模場として中層が湿った環境になった。(山脈で湿潤層が高くなってそのまま:山脈での対流が効いているのではないか??)
10:25 前坂 GAME-HUBEX&梅雨前線帯内の降水システム
- 中国大陸上では温度前線と水蒸気前線が分離。日本付近では一致。
- 6/29&7/2に深い対流雲が発達
- 6/29:亜熱帯気団内の前線。チベット高原からの擾乱に伴う:長時間持続したために総観規模(メソ?)のトラフを作った
- 7/2:中緯度擾乱に伴うもの
- 線状に組織化,水平水蒸気傾度(収束)が対流不安定を維持
- CAPE~1000
10:55 加藤 GAME-HUBEX&総観場との関係
- 大陸上では降水が活発になった後にメソ低気圧が顕在化することがしばしばある(1998.6.29,1999.06.27など)
- 99.6/27の例では,Tbbの最小から12時間遅れて等圧面高度低下と渦度がピークを取る:上層が暖かくなった後,上層の擾乱が下層まで顕在化するまで時間がかかる(前坂)
- チベット高原から浅い(50kPa面以下)低圧部が進出して東西気圧傾度が大きくなり,南風が増大:水蒸気輸送の増大:活発な対流発生・維持
- クラスターが東西に延びていても,東部分のみが東へ移動し発達,上層トラフが存在(山田)
<休憩>
11:50 里村 日変化する降水システム −タイの例−
12:25 大澤 ノンカイ付近の降水活動
- 01-4LTに雨季を通して降水量の極大がある
- 27,9,3km格子のMM5, 1998.7の1ヶ月を計算:山のすぐそばでは朝方にも雨があるときもあるが,基本的に日中に全体で雨となる。
- 風の収束線は夜間に見える
- CAPEは夜中に最大(2~4000):なぜだ?下層に水蒸気が溜まる?上層が冷える(これは雲が出来た結果か?)?(里村)
12:50 久保田 西太平洋の対流活動
- 季節内変動が卓越,階層構造
- 2000.11/27-12/11, 2N138E,みらいのレーダー観測とゾンデ集中観測
- 期間の前半(~12/5)活発,後半不活発。前半は下層に西風卓越:季節内変動の卓越時期
- CAPEは期間を通じて~2000~4000
- 季節内振動での活発期では水蒸気量が下層中層で多く(~12g/kg),不活発期では数グラム少ない(~8g/kg)
- 夕方に比較的小さなピークが有り,この小さなピークが朝方の大きなピークの環境場を用意すると考える。ゾンデの変化と対流変化とが対応。実際に対流の同定等はまだ
<昼食>
14:20 勝俣 西太平洋の対流活動
- 2N138E, 2001, 2002の観測
- 下層は西風,少し北成分。10km以上で数mの南風
- 2001
- 午後にレーダーエコー日変化のピーク
- ニューギニア島で夜中に(!!)発生したシステムがN~NEに伝播してみらいの地点(500km程度離れている)の日変化を作っている。速度~8m/s
- CAPE~1000~2000,システムに吹き込む風と伝播システムとの時間変化の対応がある
- 20002
- SWからNEへレーダー観測範囲内を移動
- 融解層付近の収束が目立つ:層状性の雲が多い
- CAPE (0~2000)やCIN,水蒸気量がシステム通過と共に大きく変動
- 不活発期より活発期の方が中層の水蒸気量が多い
- 久保田氏の日中のピークは南から伝播してきたシステムによるものか?1000km近く飛んでいる可能性有り
14:50 森 スマトラ島の対流活動
- 標高1500~2000m,コトタバンは山の中,海岸から50km程
- 11月が主雨季,4月が副雨季
- 主雨季では,5km程度まで西風。季節内振動により強弱。比湿の季節内変動は小さい
- 擾乱(MJO?)が入ってくると上層雲量が多くなり,(CAPE, CIN, shear)日変化はおよび平均値は小さくなる
- 夜中から朝にかけて海岸から沖合へ移動するシステム:層状と対流とが混合したシステム
- 日中は島の上:対流が卓越
- 数日平均するとCAPE~200(小さい!), CIN~100
- 西風ピーク8~10m/s at ~2km
15:30 上野 チベット高原の雲・降水
- 観測はチベット中央部&湿潤域(ナチュ)
- 1979:中国のレーダー観測:チベット高原では夕方に細くて高い雲が立つ
- GAME-Tibet:組織化してメソ擾乱になる例は少ない。
- 頻繁に降水がある。量的には夜の方が少し多い。南部の山岳地域で雨量が多い。
- 1998.7.6:前線通過&層状性降水:寒冷前線の前面に顕著な降水:夕方から夜半に降水。風は強い。ある程度組織化する:この場合が多い:夜中に通過すると対流性の雨にならない
- 1998.7.30:直径1000km程度の渦状擾乱,擾乱の南西象限で夜半から朝に。組織化しない
降水。風は弱い:局地循環の影響が出やすい?
- 可降水量の値には上記2例の差は大きくない。しかし起源は違う?(トラフ型はインド洋から?)
- チベット高気圧が北にシフトすると2番目のケースで雨が降らない
16:00 山田(観測フロンティア) CAPE&Shear
- アムド1998.6-8(13日オンセット)
- CAPE~1000~2000(12LTにピーク)CIN~0,オンセットにより地表付近の4~6gから8~10gに増加
- エコートップは1〜2時間後,TBBは3〜6時間後にピーク
<休憩>
16:35 竹見 中国乾燥域の対流活動
- HEIFE:38N付近のゴビ砂漠南部,1991.5/7-13,地上高度〜1500m
- 温度混合層約3km,水蒸気は混合層内で鉛直に減少(急激な混合層発達のため?)
- 混合層上端からのCAPE~450。地上からの自由対流高度~5km
- 強い砂あらしを起こしたが降水はほとんど無し。擾乱発生前は通常よりはるかに多い水蒸気量(~10 g?)
- 混合層上部の気塊はCAPEは小さい(~250)が,LFCも数百mとなり,小さなトリガーで雲となる
- 大規模な水蒸気フラックスは無い
- 一般に水蒸気鉛直分布が大きな影響がありそう
17:10 広瀬 TRMMからみた対流活動(日周変化)
- サンプル数が3年になると結果も変わる!!
- 多島海の島の周りは夜中から朝方に降水ピーク,その周りでは午後という輪が取り巻いている
- 四川盆地には夜中に強い対流活動
- インドの25N以南,海岸より1度以上内陸:降水量は19時頃ピーク(10^4km^2以上のシステムの寄与:大きなシステムはTRMMの観測範囲をはみ出す:影響は小さい?)
- 時間的に足し合わせた図で空間分解能はどの程度なのか,確認する必要有り
17:45 遠藤 夏季ユーラシア大陸における雲活動
- Hahn & Warren(1999):目視雲量データ
- (報告されたもの1種類のみを統計)
- 大陸中国の7月では,積雲の観測(報告)頻度が落ちてきている:全雲量は増加傾向,水蒸気量は増加傾向!
- シベリヤではScの出現頻度が多く,対流雲は10%以下
18:15 檜山 GAME-Siberiaで観測された対流活動
- 標高1500~2000m,コトタバンは山の中,海岸から50km程
- 2000.4-6月(5/20展葉)レナ川を東西に横断する境界層飛行機観測
- 背の低い積雲がレナ川の西に分布(擾乱通過後の安定したとき)
- 風が弱いとレナ川上空と陸上とで境界層が500m程違う
- 境界層が不均一になるかどうかは(u* theta_v/H)(zi/Lh)で分類できる(Lh:地表面状態の変化スケール(残雪,展葉などの影響),H:顕熱フラックス)
18:40-19:30 篠田 議論
- 混合層上部の水蒸気の役割は?(効いていたり効いていなかったり・・)
- CAPE計算法の統一が必要か
- 環境場の影響の整理の必要:どのように整理すれば良いのか????
- MJOとしては,OLRで見ると対流不活発域を含めて活動域として認識されてしまう